研究レポート

【研究紹介】
湖沼における淡水ブルーカーボン増強に向けたCO<sub>2</sub>調整機能の解明

  • A分野
  • A04班
2022年07月15日
 中山 恵介  神戸大学/教授(水環境工学)

 カーボンオフセットやカーボンニュートラルの推進を目指し,沿岸域における「ブルーカーボン研究」が世界的に成されている.一方,世界の沿岸域に対して約2倍以上の面積を有する湖沼においては,これまで陸水は炭素の放出源と考えられていた中,最新の研究により,大量の炭素が吸収されていることが明らかにされつつある.湖内全域における炭素吸収ポテンシャルを正確に見積もるためには,水生生物や植物の空間スケールを考慮しつつ,正味でどの程度炭素が吸収されているかを明らかにしなくてはならない.
 そこで本研究では,主要な炭素の吸収源である水草や藻類(主にシオグサ類)が多く存在する阿寒湖を対象とし,正味の炭素収支にとって重要な①呼吸・光合成による炭素放出・吸収量,②底質からの炭素の溶出量,および③風波や吹送流による水草や藻類の打ち上げによる系外への炭素の除去量を定量的に解明する.リモートセンシングおよび潜水調査による水草・藻類調査,水中カメラによる打ち上げ量推定,現地観測による水草・藻類によるフェノロジーを考慮した炭素吸収量調査,室内実験による水草の炭素吸収ポテンシャル計測を行い,湖内における炭素の複雑な生物化学的変化,および輸送機構を再現出来るモデルを構築し,計測結果を用いてその検証を行う.最終的には,水草の植栽などがどの程度のCO2調整機能を有するかを評価することで,「湖沼における淡水ブルーカーボン増強に向けたCO2調整機能の解明」を確立する.

 キーワード:水草,藻類,DIC,TA,成層,流動