研究概要
植物が光合成によって固定した炭素は、有機物となって植物体内に蓄積した後、植物遺体(リター)として土壌へ供給され、一部が微生物によって分解されてCO2やメタンとなり、残りは難分解性化や物理的隔離などによって分解をまぬがれ、土壌中に貯留していく。これらのプロセスの速度は、様々な要因に強く依存し、生態系によって大きく異なると考えられているが、そのメカニズムの理解は不充分である。
本計画研究では、植物が吸収した炭素が植物体や土壌中に蓄積されるまでの速度を様々な森林で測定・解析し、その決定要因を探る。2つのアプローチを採用する。①様々な森林において、森林樹木の生産力と、14Cを用いて炭素貯留速度を測定し、それらのばらつきを構成樹種の機能形質と気象・土壌要因によって説明する統計モデルを開発する(データ駆動型アプローチ)。②コアサイトにおける植物・土壌中の有機化合物をGC-C-MSやメタボローム解析を用いて徹底的に追跡する(メカニズム解明型アプローチ)。②においては、実験室において13Cと15Nでラベルした植物を育成し、そのリターをコアサイト土壌中に埋め、化合物の行方を追跡するという画期的な手法を用いる。以上の結果をもとに、炭素貯留速度の決定要因を明らかにし、炭素貯留速度が最大になる樹木の種組成と環境の組合せを予測する。
研究メンバー一覧
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- 研究代表者
彦坂 幸毅HIKOSAKA Kouki東北大学/教授(植物形質) -
- 研究分担者
平舘 俊太郎HIRADATE Syuntaro九州大学/教授(土壌調査・土壌化学分析) -
- 研究分担者
小嵐 淳KOARASHI Jun日本原子力研究開発機構/研究主幹(放射性同位体解析) -
- 研究分担者
木庭 啓介KOBA Keisuke京都大学/教授(安定同位体・バイオマーカー・元素分析) -
- 研究分担者
小黒 芳生OGURO Michio森林総合研究所/主任研究員(統計モデリング) -
- 研究協力者
黒川 紘子KUROKAWA Hiroko京都大学/准教授(植物-土壌相互作用) -
- 研究協力者
和穎 朗太WAGAI Rota農業環境変動研究センター/上級研究員(土壌)