【研究紹介】全国の森林で細根量を調査
- B分野
- B03班
片山 歩美 九州大学/助教(生態系生態学)
森林の地下部、つまり土壌には、たくさんの細根が生きています。毎年、葉と同じように細根は枯死して、新しい細根が生まれてきます。1年間に新しく生産される細根の量(細根生産量)は葉と同程度であるとも言われています。しかしながら、土壌の中を調査するには非破壊にならざるを得ず、細根生産量を測定することは困難が伴います。これまで色々な方法が提案されてきましたが、一長一短あり、未だ確立した細根生産量の推定方法はありません。その様な中、これまで多くの森林で細根生産量が測定されてきましたが、葉や幹枝の生産量に比べると研究の数は非常に少ないという問題がります。葉や幹枝は気温や降水量に明らかに影響を受けることが分かってきましたが、細根生産量は方法による誤差が大きく測定数も限られているため、これまでの研究では気温や降水量などの影響は不明瞭でした。そこで、全国の森林で、同じ手法を用いて一斉調査を行い、細根生産量を測ることが本研究の目的です。これにより、森林タイプ(樹種や人工林の種類)や環境(気温や降水量など)によってどの様に細根生産量が変化するのかを明らかにしたいと思っています。
2022年10月から2023年1月にかけて、全国の16の森において、細根生産量を測定する仕掛け(イングロースコアの設置)を実施してきました。1年後、これを回収することで細根生産量を推定することができます。これと同時に、現在、どのくらいの細根が土壌中に存在するか(細根バイオマス)を明らかにするために、直径5㎝、深さ30㎝の土壌を合計150本採取し、そこから細根を取り出して乾重量を測定しました。カラマツやヒノキ、広葉樹林など様々な森林タイプで採取しましたが、森林タイプに関係なく気温が高い森林では細根バイオマスが高いことが分かりました。2023年10月からは細根生産量の調査が始まります。結果が楽しみです。
キーワード: 細根バイオマス、生産量、森林