【研究紹介】放射性炭素を利用して微生物呼吸の起源となる土壌有機物の年代を評価
- A分野
- A04班
2023年10月17日
安藤 麻里子 日本原子力研究開発機構/研究主幹(同位体測定・解析)
森林土壌には数百年から数千年以上の長期間安定に貯留する有機物が存在しています。地球温暖化の影響でそのような長期間貯留している土壌有機物の分解が加速し、CO2として大気中に放出されれば、地球の炭素循環のバランスが崩れる可能性があります。本課題では、温暖化操作実験を行っている日本国内5ヶ所の森林で微生物呼吸(土壌有機物の分解により放出されるCO2)の放射性炭素同位体比(Δ14C)を測定し、微生物呼吸の炭素年代を明らかにするとともに、温暖化操作によりその起源がどのように変化するかを明らかにすることを目的としています。
これまでの調査で、微生物呼吸のΔ14C値が北海道の泥炭土壌サイト(天塩サイト)と他のサイトで異なる傾向を示すことがわかりました。天塩サイト以外では数年前に植物により固定された比較的若い有機物が微生物呼吸の起源となっており、10年程度の温暖化操作ではその起源は変化していませんでしたが、天塩サイトでは、より深い層の古い有機物が分解されており、温暖化の進行で深い層の古い有機物の分解が進む可能性があることがわかりました。今後、温暖化による微生物呼吸起源の変化の要因について、より詳細に解析を行う予定です。
キーワード: 放射性炭素同位体、安定同位体、温暖化操作実験、土壌有機物