【研究紹介】高解像度な生物地球化学プロセス予測のための微生物群集機能解明
- A分野
- A04班
2025年01月20日
瀬戸 繭美 奈良女子大学/助教(化学熱力学、地球微生物学、数理生物学)
地球環境は、太陽系の近隣惑星である金星や火星とは大きく異なる状態にあります。この特異な地球環境は、地球上で誕生し、進化と増殖を遂げた生物が、炭素や窒素などの物質循環過程に影響を与えることで形成されてきました。特に、微生物が果たす役割は重要であり、一部の物質循環機能は微生物に特有です。そのため、微生物機能の理解無くして、現在そして将来の地球の状態を説明することはできません。
しかしながら、地球の状態を形作る微生物の機能には、未解明の点が多く残されています。微生物や微生物が触媒する化学反応は肉眼で直接観察することができないため、どの種がどのような機能を持ち、さらにどのような機能が存在しているのかといった全貌は、依然として不明なままです。
本研究では、微生物のDNAおよびRNAと化学種濃度を高頻度でモニタリングし、これらの変数間の因果関係を解析することで、「どの微生物がどのような機能を保持しているか」の特定を目指します。特に、物質循環において重要な酸化還元機能に焦点を当て、電位測定を用いたリアルタイムモニタリングにより、目的とする機能が発現しやすい条件を制御することを試みます。この手法によって、微生物の酸化還元機能を高い信頼性で推定できれば、物質循環過程における微生物の寄与をより高解像度で把握することが可能となります。さらに、将来予測モデルの精度向上や環境改善・修復のための微生物機能の活用に繋がると期待されます。
キーワード:酸化還元化学、微生物相互作用、オミクス解析、統計学的因果推論、生体エネルギー論