【研究紹介】脊椎動物が土壌生物に与える影響について枠組みを提案
- B分野
- B03班
2025年01月20日
富田 幹次 高知大学/助教(動物生態学)
地上部と地下部(土壌)の生物間相互作用は個別に考えられてきましたが、ここ20年ほどでこれら2つの生物群集のつながりが積極的に研究されてきました。一方、地上部で活動する脊椎動物(鳥や哺乳類など)の多くは、土壌動物を採食したり土壌を掘り返したりするなど(図1)、地下部群集に対して強く影響している可能性がありますが、彼らの役割を総合的に理解するための枠組みはありませんでした。この総説論文では、地上部の生物から地下部の生物へ影響する経路として、脊椎動物が果たす役割について整理しました。さらに、整理した経路を発展させることで、脊椎動物が土壌生物群集の空間構造や分布を変え、生態系機能に波及する可能性を提示しました。
図1:今回整理した脊椎動物が土壌生物に与える影響の実例
(a)ミミズを食べるトガリネズミ;(b)キノコを食べるジリス;(c)セミ幼虫を掘り返すヒグマ;(d)トナカイの群れが通過した跡;(e)ヒグマの糞;(f)イノシシの死骸
(2025年1月14日論文掲載)
引用文献:
Tomita, K. M., Manlick, P. J., Makoto, K., Fujii, S., Hyodo, F., Miyashita, T., & Tsunoda, T. (2025). The underappreciated roles of aboveground vertebrates on belowground communities. Trends in Ecology & Evolution.
キーワード:頂点捕食者、生物間相互作用、炭素循環