2025年02月14日
土壌細菌の遺伝子水平伝播に関わる可動性遺伝因子の進化(A03班)
研究代表者: 近藤 倫生 東北大学/教授(データ解析)
代表的な環境汚染物質であるポリ塩化ビフェニル(PCB)を分解できる細菌Acidovorax sp. KKS102株が持つPCB分解遺伝子群は、ICE(integrative and conjugative element)と総称される可動性遺伝因子の上に乗っています。ICEはいわば、染色体に潜り込んだプラスミドのようなものです。
本研究では、PCBやビフェニルの分解に関わるbphオペロンの下流に位置するtraR遺伝子の役割を調べました。traRを過剰発現すると、接合伝達に関連する遺伝子であるtraGの発現が3倍、xisの発現が80倍に上昇し、実際にICEの切り出しと伝達頻度が大幅に増加しました。本ICEが属するTn4371ファミリーのICEは幅広い細菌種から見出され、多様な乗客遺伝子を乗せていますが、ほぼ共通して乗客遺伝子の下流にtraR遺伝子が存在する構成になっています。Tn4371ファミリーのICEは、過去にtraRが現在の位置に挿入されたことで、乗客遺伝子が活性化する条件下、すなわち、乗客遺伝子が宿主に利益を与えるであろう条件下で、ICEの伝達が活性化するような仕組みになったこと、このような仕組みが本ファミリーICEの繁栄を支えてきたこと、が考えられます。
キーワード:細菌、可動性遺伝因子、水平伝播、環境汚染物質、PCB
引用文献:Microbiology Spectrum 12(10): 00607-24 (2024)
論文掲載日:2024年9月12日