研究レポート

【論文紹介】
風乾土から回収した水抽出有機物による微生物バイオマス推定

  • A分野
  • A04班
  • 過去
2025年05月14日
永野 博彦 新潟大学/助教(温室効果ガス動態)

 土壌の一般的な長期保管形態である風乾土の水抽出有機物(風乾土WEOM)についての論文が新たに公表されました。国内10カ所の森林および草地の深さ0-50cmから層位別に採取された計50土壌を使い、各土壌の風乾土WEOM炭素(WEOC)量を従来法で測定された土壌微生物バイオマス炭素(MBC)量と比較しました。その結果、風乾土WEOC量は従来法によるMBC量と非常に強い正の相関(R2=0.94, p<0.01)を示し、風乾土WEOC量はMBC量の31%に相当することが示されました。さらに風乾土WEOC量は、各種土壌理化学性に対し、MBC量とほぼ同一の挙動を示すことも強く示唆されました。
 本研究で提案された風乾土水抽出法を用いれば、新鮮な土壌が無くとも既存の風乾土試料を利用することで微生物バイオマスを推定できます。また、毒性物質を使用できないような環境でも微生物バイオマスを測定できるため、土壌炭素動態を直接担う微生物バイオマスの大規模データセット構築が飛躍的に進む可能性があります。

キーワード:微生物バイオマス、風乾土、水抽出、土壌有機物

引用文献:
Nagano, H., Kanda, Y., Suzuki, Y., Hiradate, S., Koarashi, J., Atarashi-Andoh, M., & Guo, Z. (2025). Estimation of microbial biomass based on water-extractable organic matter from air-dried soils from Japanese forests and pasture. Discover Soil, 2(1), 27.

(論文掲載日:2025年4月24日)