【研究紹介】生物多様性の創出過程の予測を目指して
- C分野
- C03班
入谷 亮介 理化学研究所/上級研究員(理論生態学・進化生態学・生物多様性科学)
“To do science is to search for repeated patterns, not to simply accumulate facts […].” (R. H. MacArthur, 1972)
生物学の面白さは、共通の法則の解明だけでなく、多様性にもある。したがって、多様性を生み出す共通パタンがわかると、もっと面白くなる。本公募研究では、この野心を胸に、生物多様性の創出パタンを解明するための理論を構築したいと考えている。
生物多様性は、局所的なスケールから大域的なスケール間で、大きく意味が異なる。地球上の生物多様性、日本列島の生物多様性、あるいは庭の生物多様性などに、明確な意味の違いがあるのは明らかである。こうした空間スケールを考慮した生物多様性概念を理論的に適切に定式化し、そしてその時間変化を定量的に予測することは、生態学の究極課題である。
本公募研究においては、生物の在不在時系列データを用いて、多様性の将来予測を行うための理論構築を試みたい。また、そうした理論を、生物系機能・生産性の解析に応用したい。さらには、必要に応じて抽象数学的な概念を用いながら、「多様性とは一体なにか?」についても理論研究を進め、進化・生態学の様々な「多様性」という概念を統一的に理解するための理論を構築したい。
引用文献:
R Iritani*, VJ Ontiveros, D Alonso, JA Capitan, W Godsoe, and S Tatsumi (2022) bioRxiv Jaccard dissimilarity in stochastic community models based on the species-independence assumption
キーワード:空間多様性・多様性変化・数理モデル・生態系機能