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2023年11月10日

土壌での人工殺虫剤分解細菌のゲノム進化(A03班)

研究代表者: 近藤 倫生 東北大学/教授(データ解析)

 

 細菌は人為起源の環境汚染物質に対しても新しい代謝能力を獲得するなど迅速に適応・進化します。永田らのグループは、人工の有機塩素系殺虫剤g-HCHを添加した試験圃場からg-HCH分解細菌UT26株を単離し、本株を用いて細菌のg-HCH分解代謝系の全貌を世界に先駆けて明らかにしました。本研究では、この試験圃場の土壌から新たにg-HCH分解細菌TA15株を単離し、ゲノム解析および機能解析を行いました。その結果、TA15株のゲノムの基本骨格はUT26株と同一でしたが、(i) g-HCH分解遺伝子群がUT26株では散在しているのに対してTA15株では集中している、(ii) 両株でg-HCH代謝の鍵となる分解酵素遺伝子の質・量が異なる、という顕著な違いが見られました。実際、TA15株はg-HCH分解代謝において、それ以上分解されないdead-end産物を溜めにくいという、UT26株に比べてg-HCH分解代謝に関して「進化型」と思われる特徴を有していました。この結果は、実際の土壌中で細菌のg-HCH分解機能に関するゲノム進化が進行中であることを示しています。

(論文掲載日:2022年3月22日)

 

キーワード: 土壌、細菌、ゲノム、環境汚染物質、人工殺虫剤

引用文献:
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 2022, Vol. 86, No. 6, 800-809
日本農薬学会誌48, 125‒131 (2023)