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2023年11月10日

環境DNA分析から海の魚の種間関係を推定(A03班)

研究代表者: 近藤 倫生 東北大学/教授(データ解析)

 

 近年、野外の生物モニタリングにおいて、環境中に残存するDNAを分析し、そこに存在する生物を網羅的に検出する「環境DNA分析」の利用が広がっています。しかし、これまでの環境 DNA 研究のほとんどは、ある種や系統がいる/いないといった生物量の情報を引き出すまでにとどまっていました。京都大学白眉センターの潮雅之特定准教授(現:香港科技大学助理教授)らの研究グループは、環境DNAの高頻度観測と非線形時系列解析法を組み合わせることで、生物量だけでなく生物間の関係性も同時に検出できることを明らかにしました。千葉県房総半島沿岸から得た魚類環境DNAを用いて行われた本研究では、さらに水温が魚類間の関係性を変動させる要因として重要であることも突き止めました。今回の研究成果は、正確な生態系の状態把握や近未来予測に役立つことが期待されます。

(論文掲載日:2023年7月11日)

 

キーワード: 魚類、環境DNA、生物間相互作用、温度依存性

引用文献:
M. Ushio, T. Sado, T. Fukuchi, S. Sasano, R. Masuda, Y. Osada, M. Miya (2023) Temperature sensitivity of the interspecific interaction strength of coastal marine fish communities. eLife 12: RP85795.