【研究紹介】衛星画像と深層学習を用いた、斜面崩壊に伴う炭素移動量評価
- B分野
- B03班
2025年01月15日
江草 智弘 静岡大学/助教 (森林水文学)
斜面崩壊は、急峻な山地斜面で起こる土砂移動現象であり、潜在的に多大な土壌炭素の移動をもたらすことが予想されます。しかし、既存の実証的研究は限られた地域でしか行われておらず、山地森林域における斜面崩壊による土壌炭素移動の全体像を把握するには程遠い状況です。本研究は、近年の技術革新が目覚ましい深層学習を用いた斜面崩壊の自動抽出を行い、日本全国で、斜面崩壊によって、いつ、どこで、どれほどの土壌炭素が移動するかを明らかにすることを目的にしています。学習データを得るために、西日本豪雨を対象として斜面崩壊抽出を行い、その炭素移動量と統計的特性を調べました。西日本豪雨では、航空機レーザー測量を用いて、詳細な地形変化が明らかになっています。結果として、合計で14460個の崩壊が確認され、それに伴い移動した土壌炭素量は24.3 GgCと推定されました。広島・岡山の花崗岩地域では小規模の崩壊が多発する一方で、愛媛・高知では大規模な崩壊も見られました。特に、愛媛・高知の崩壊面積の頻度分布は、既存の研究で示された範囲に収まったものの、広島・高知では既存の研究よりも小面積の崩壊が多いという結果になりました。今後は、こうした小面積の崩壊を衛星画像から抽出することにチャレンジしたいと考えています。
キーワード:斜面崩壊・機械学習・土壌炭素