【研究紹介】東ユーラシア域を網羅する土壌炭素放出の温暖化影響とフィードバック効果に関する研究
- B分野
- B03班
2022年10月05日
梁 乃申 国立環境研究所/室長(陸域生態系炭素循環)
森林土壌に蓄積した膨大な有機炭素の動態に及ぼす気候変動の影響とそのメカニズムを解明するために、代表申請者は独自に構築した土壌を中心とした陸域生態系における温暖化効果ガスフラックスに関する「世界最大規模のチャンバー観測ネットワーク」を活用し、日本を中心に東ユーラシア地域を網羅する代表的な森林生態系における温暖化操作実験及び降雨操作実験を実施する。また、そこから得られた土壌有機炭素分解速度に関する連続観測データに基づき、広域推定及び将来予測を行う。
北海道最北端(北緯45°)の針広混交林からマレーシア半島部(北緯3°)の熱帯雨林までの広域トランセクトを縦断する14ヶ所の森林生態系を対象に、(1)既存の温暖化操作実験を継続し、世界的に貴重な森林土壌有機炭素分解に関する長期連続観測データを得る;(2)温暖化操作実験を世界的な観測の空白域である熱帯雨林(マレーシア半島部)で展開し、温暖化に対する土壌炭素貯留量の変動に関する新たなデータベースを構築する;(3)一部のサイトにおいて降雨操作実験を行うことで、乾燥や豪雨などの極端気象が土壌有機炭素分解に及ぼす影響を把握する;(4)有機炭素分解に寄与する土壌微生物(DNA)および土壌放射性炭素(14C)を分析し、土壌炭素動態の長期的な温暖化応答メカニズムを解明する;(5)得られた観測データに基づき、機械学習などの複数のアプローチを検証しながら活用し、東ユーラシア地域における1 kmメッシュ程度の超高解像な土壌CO2フラックスの広域推定と将来予測を行う。