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2023年10月12日

シロアリからのメタン放出量をグローバル推定(C01班)

研究代表者:  伊藤 昭彦 東京大学/教授(生態系モデル)

 シロアリももちろん生物圏の1部です。最も身近なのは木造家屋を損傷する害虫としてかもしれませんが、女王アリを中心とした集団を形成する社会性昆虫として、あるいは熱帯林やサバンナで枯れ木などを食料とする分解者として、生態学者の興味を引き付けてきました。また、シロアリが腸内にセルロースなどを分解する微生物を共生させており、それがメタンの放出源になっていることも古くから知られていました。

 この研究では、シロアリの分布やガス放出に関する最新のデータと、わたしたちが開発してきた陸域生態系モデルを用いて、シロアリからのメタン放出量をグローバルに推定しました。このようなグローバルな推定例は過去にもありましたが、気候変動や土地利用、さらに大気CO2濃度上昇による植生生産力の変化の影響を考慮し、最近のデータを活用した推定を行った点に新規性があります。その結果、現在のシロアリからのメタン放出量は約14.8 Tg CH4 yr–1と推定されました(Tg = 1012g)。この量は自然界から放出される全メタンの5%程度に相当すると考えられ、他に放出源がない森林やサバンナでは主要なメタンの放出源になっていると考えられます。また、将来の気候予測シナリオなどを用いた予測を行ったところ、温暖化のため、現在は寒冷なためシロアリが分布できない北方域に分布可能域が拡大し、更なるメタン放出増加を招くという気候フィードバックの可能性も示唆されました。

(オンライン掲載日:2023年10月11日)

 

キーワード: 気候変動、土地利用、温室効果ガス、炭素循環

引用文献:
Ito, A.: Global termite methane emissions have been affected by climate and land-use changes, Scientific Reports, 13, 17195. doi:10.1038/s41598-023-44529-1, 2023.