研究レポート

【研究紹介】
環境DNA適応形質の時空間変異によって明らかにする社会生態進化連関

  • A分野
  • A04班
2022年10月11日
 内海 俊介  北海道大学/准教授(進化群集生態学)

 人新世における持続可能性を目標とするとき,生態(Eco)と進化(Evo)に加えて,人間の社会的活動やプロセス(Socio)を統合した社会-生態-進化連関の枠組みによる研究が新たに求められる。しかし,生態の進化の相互連関(フィードバック)だけでも,理論研究や実験室研究によるものに限られており,非制御的・開放系の環境においてその実態と重要性は明らかになっていない。本研究は,環境DNAを新しい手法で活用することによって,種内レベルにおける遺伝・多型情報と種間・生態系レベルにおける情報という異なる階層における多様性情報を統合し,さらにその時空間的変異情報の統合を実現する。加えて,衛星データなどのビッグデータを加えて総合的に解析し,社会-生態-進化連関の実態解明を行う。

 本研究の目的は,われわれが独自に蓄積してきた2つの研究システムを対象に,ゲノミクスを含むビッグデータを広域スケールで集積して解析することによって,社会-生態-進化連関の実態について世界に先駆けて解明することである。特に,①都市~郊外の環境傾度に着目することで,人間による環境改変が生態と進化の永続的な連関にどのようなインパクトを与えるのか?②生態と進化の連関によって,人間社会にどのようなフィードバックが生じるのか?という2点について明らかにすることを目的とする。

 

キーワード: 都市進化、迅速な進化、生態-進化フィードバック

 

引用文献:

  • Utsumi (2015) Feeding evolution of a herbivore influences an arthropod community through plants: implications for plant-mediated eco-evolutionary feedback loop. Journal of Ecology 103: 829-839.
  • Santangelo, Utsumi et al. (2022) Global urban environmental changes drives adaptation in white clover. Science 375: 1275-1281.