研究レポート

【研究紹介】
BVOC放出を介した動的な植物-葉圏微生物相互作用の解明

  • B分野
  • B03班
2022年08月01日
 甲山 哲生  東京大学/助教(生態遺伝学)

 植物が放出する生物起源揮発性有機化合物(biogenic volatile organic compounds, BVOC)と葉圏微生物の相互作用を明らかにすることは、陸域生物圏から大気へのBVOC放出を介した気候変動への影響を評価・予測する上で重要である。植物のBVOCと葉圏微生物は拡散共進化の過程を経て多様化してきたと考えられ、異なる環境下においては、植物側の遺伝的変異に基づくBVOCの組成や放出量の違いに対応して、葉圏微生物群集の組成や植物との相互作用が変化すると予想される。しかし、これまでの研究は、BVOCと葉圏微生物のどちらか一方のみの解析に留まっており、こうした動的な植物―葉圏微生物の相互作用系を裏付ける研究はない。

 本研究では、日本の温帯林で卓越するスギを対象として、化学分析およびメタゲノム解析によりBVOCと葉圏微生物の詳細な解析を行い、共通圃場での環境操作実験と組み合わせることにより、1)スギが放出するBVOCと葉圏微生物群集の時間的変化の解明、2)環境ストレスがBVOCと葉圏微生物群集の相互作用に与える影響の評価、3)スギ天然林における環境勾配に沿った葉圏微生物群集の変化の解明を行う。

 

キーワード: 生物起源揮発性有機化合物、スギ、葉圏微生物、植物-微生物相互作用、メタゲノム解析、環境操作実験

引用文献: Hiura T, Yoshioka H, Matsunaga SN, Saito T, Kohyama TI, Kusumoto N, Uchiyama K, Suyama Y, Tsumura Y (2021) Diversification of terpenoid emissions proposes a geographic structure based on climate and pathogen composition in Japanese cedar. Scientific Reports 11, 8307.