【研究紹介】

土壌動物群集の同位体とDNAバーコーディングから炭素循環を理解する

兵藤 不二夫　　岡山大学／教授（同位体生態学）

　陸上生態系において植物の作り出す一次生産の大部分は植食者に食べられることはなく、落ち葉や倒木として土壌に入る。これら植物の遺体は土壌微生物や土壌動物によって分解され、植物が利用できる栄養塩類が供給される。その一方で土壌微生物や土壌動物による分解を免れた有機物残渣は土壌に長期に貯蔵される。この有機物分解や炭素隔離といった土壌炭素動態に関わる土壌動物の現存量や組成、そして土壌動物の餌資源はよくわかっていない。
　これらを明らかにするために、令和４年度と５年度にモニタリングサイト1000の森林サイト（足寄、苫小牧、糟屋、与那）において、土壌を採取し、土壌動物や土壌微生物を抽出した。現在、その安定同位体、放射性炭素、DNAメタバーコーディング分析を行っている。これらの結果と、気候条件や土性などの非生物的要因や、植物の機能形質や土壌微生物群集などの生物的要因とあわせて、土壌動物群集と土壌炭素動態との関連を解明する。

キーワード：　　土壌炭素蓄積、土壌動物、餌資源、同位体、DNAメタバーコーディング