研究レポート

【研究紹介】
光照射によって活性化する農地土壌のCO<sub>2</sub>吸収

  • A分野
  • A04班
2023年09月27日
村瀬 潤   名古屋大学/教授(耕地情報利用)

 土壌の炭素循環において微生物は主に植物由来有機物の分解者、変換者として位置づけられており、土壌微生物によるCO2固定の量的意義については十分考慮されてきませんでした。本研究では、光合成微生物の土壌炭素循環における役割を明らかにすることを目的とし、利用形態の異なる土壌のCO2吸収活性を測定しその特性解析を行うとともに、土壌-大気間のCO2交換に対する光の影響を検証しました。水田、畑地、草地から採取した土壌を室内で培養すると、光照射により数日~1週間でCO2発生から吸収に転じることが明らかとなりました。また、土壌カラムから放出されるCO2量は光照射により減少し、気相のCO2濃度は大気レベルを下回ったことから、土壌表面の微生物光合成は土壌呼吸由来のCO2を再吸収するとともに、大気レベルのCO2を吸収する高い基質親和性を有すると推察されました。圃場の土壌CO2フラックスは暗条件に比べて明条件で低くなるケースが確認され、光合成微生物の活性が土壌表面でのCO2交換に影響を与えることが示されました。今後、CO2吸収の時空間分布や支配要因を詳細に解析することで土壌炭素循環における光合成微生物の役割を明らかにできると期待されます。

(日本土壌肥料学会にて発表:2023年9月12日)

 

キーワード: 土壌藻類、光合成、CO2フラックス

引用文献:  田中智規・沢田こずえ・村瀬 潤 (2023) 日本土壌肥料学会松山大会要旨集