【研究紹介】ゲノム解析に基づく被子植物の炭素固定能力を制御する遺伝子の解明
- A分野
- A04班
2024年11月07日
白井 一正 九州工業大学/助教 (ゲノム解析)
植物は、大気中の二酸化炭素を光合成により吸収し、有機物を作り出す炭素固定能力を持つ生命体です。現在、急激に変化している地球環境を正確に予測するためには、この植物の炭素固定能力の地球規模での予測が重要です。しかし、約27万種存在する植物の種ごとに著しく異なる炭素固定能力を把握することは、これまで困難でした。そこで、私たちは前期公募班として、陸上植物の90%を占める被子植物において、種ごとに異なる炭素固定能力(光合成速度(Amass)と葉面積あたり葉重(LMA))を、遺伝情報であるゲノムから予測する方法を開発することに成功しました。
本研究では、予測モデルをより多くの植物種に適用するため、次世代シーケンス技術を使い、遺伝子ファミリー内の遺伝子数を予測する新たな手法の開発を行います。これにより、ゲノムが未構築の植物種で炭素固定能力を予測可能にすることを目指します。
また、植物の炭素固定能力を向上させるためには、幅広い植物種間で共通する炭素固定能力を制御する遺伝子を解明することが非常に重要です。これまでに構築した予測モデルから、炭素固定能力に関連の強い遺伝子ファミリーが推定されています。この中から、候補となる遺伝子ファミリーを選出し、それぞれの遺伝子ファミリーから最も発現量が高い代表的な遺伝子をシロイヌナズナで選出した。これらの候補遺伝子の発現抑制体をシロイヌナズナで作成し、AmassとLMAを測定することで、その機能を明確にすることを目指します。
キーワード: 遺伝子ファミリー、炭素固定能力、被子植物