【研究紹介】森林におけるThermophilizationとその生態系機能への影響を解明する
- A分野
- A04班
2024年11月07日
辰巳 晋一 京都大学/准教授(群集生態学)
温暖化に伴い、各地の生態系ではthermophilization、すなわち「高温に適応した種の増加」が起きています。Thermophilizationの進行速度や決定要因を明らかにし、生態系機能に与える影響を定量化することは、多様性保全や生態系サービス維持の基盤となります。
本研究では樹木を対象とし、森林観測データベースと統計モデリングを使って、2つの仮説を検証します。仮説①:分散制限(生育に適した場所があっても、地理的障壁や種子散布の限界などの理由でその場所にたどり着けない現象)や樹木個体が死亡するまでのタイムラグ(気温が生育適温より高くなっても、樹木は一般的に長寿なためすぐには死亡せず居座る)によって、thermophilizationの進行が遅れる。仮説②:樹種の分布シフトが温暖化のスピードに追い付かない結果、各地の樹木群集と温度環境の間にミスマッチ生じ、森林の一次生産性が低下する。以上より、分散制限や死亡までのタイムラグが温暖化に対する樹木群集の変化を遅らせ、森林の炭素貯留機能の減退を招くことを検証します。
キーワード:温暖化、種分布モデル、一次生産性、気候負債