【研究紹介】日本全国における藻場の分布面積と CO<sub>2</sub> 吸収量の算定システムを開発
- B分野
- B03班
茂木 博匡 海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所/主任研究官(生態系モデル)
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に基づき、先進国では、自国の温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)をUNFCCC事務局に報告することが義務付けられている。
日本のインベントリにおいては、自然ベースのCO2吸収量として、森林は既に登録されており、2022年にはブルーカーボン生態系として、マングローブが報告された。
日本および世界におけるブルーカーボン生態系では、海草・海藻藻場の面積が最大面積を誇るが、これまでに海草・海藻藻場におけるCO2吸収量のインベントリ登録に至った国はない。その理由として、海草・海藻藻場の分布が短期的に変動するため、観測データの集積が困難であることが主な理由として考えられている。
そこで我々は、既往研究*1に基づき、数値モデルを用いて海草・海藻藻場の成長の制限因子となる環境データ(地形、底質、水温、光透過率等)から算定した藻場の分布面積を農林水産省のプロジェクトで計測された吸収係数*2と組み合わせることで、日本全国における藻場の分布面積とCO2吸収量を算定できるシステムを開発した。本システムによって、2024年に世界で初めて海草・海藻藻場におけるCO2吸収量をインベントリに報告した。
また、インベントリにおいては毎年かつ半永久的な対応が求められることが予想される。そこで高効率的な対応を目指すために、環境データの収集から吸収量算定までを自動的に実施できるデータアーカイブシステムの構築も現在進めているところである。
日本の海草・海藻藻場の面積の推移
(1990年から近年にかけて、面積は約半分に減少している)
日本の海草・海藻藻場におけるCO2吸収量の推移
(1990年から近年にかけて、CO2吸収量は減少している)
キーワード:海草・海藻藻場; ブルーカーボン; インベントリ; データアーカイブシステム
引用文献:
*1Moki et al., Projection of changes in the global distribution of shallow water ecosystems through 2100 due to climate change, PLOS Climate, Vol2, No.11, e0000298, 2023.
*2水産研究・教育機構, 海草・海藻藻場のCO2貯留量算定ガイドブック, 水産研究・教育機構, pp.13, 2023.